トルコ大統領選挙は地域間格差による明瞭な結果が出た
- 2014/08/11
- 14:06

トルコ大統領選挙の投票が10日に行われ、正式な開票結果の発表はまだですが、エルドアン首相が勝利したようです。第一回投票で52%弱を獲得し、決選投票を行わずに当選が決まりそうです。8月8日のNHKBS1「国際報道2014」でも解説しました(特集「世界が注視 トルコ『エルドアン大統領』誕生か」)が、事前の大方の予想通りの結果になったようです。あとは投票率の意味をどう読むかぐらいでしょう。トルコ政治経済についての...
米国のイラク北部限定空爆の意図と目標
- 2014/08/09
- 01:27

8月7日のオバマ大統領によるイラク北部への空爆・人道物資投下の許可を受けて、米軍は8日にイラク北部クルド人自治区(クルド自治政府)の首都エルビール付近で、侵攻するISIS(改称して「イスラーム国家(IS)」を名乗っている)に対する空爆を行った模様だ。地図で見てみよう。出典:BBCこの地図ではクルド地域政府(北部三県)が濃く塗られており、その範囲を超えてどこまでクルド部隊(ペシュメルガ)が支配している...
ガザ情勢のライブ・アップデートはこちらから
- 2014/08/08
- 15:19
ガザ情勢について、停戦期限が切れた後の詳細な状況は、イスラエル紙のホームページあるいはアルジャジーラなどの国際衛星放送ホームページのライブ・アップデートで分かります。タイムズ・オブ・イスラエルTruce ends with rocket fire after Hamas rejects calls to extend itYネット・ニュースUpdatesハアレツ紙(有料)LIVE UPDATES: Rocket fire resumes as cease-fire endsアル・ジャジーラ・イングリッシュ(情報が雑多な...
ガザの一時停戦が延長合意ないまま期限切れ──ハマース軍事部門は挑発に出るか
- 2014/08/08
- 13:55
イスラエルとガザのハマースの間の紛争は、8月5日朝8時(現地時間)から72時間の停戦が発効し、ここまで概ね守られてきましたが、8日朝8時(日本時間では午後2時)に期限が切れます。あと10分を切りました。イスラエルは停戦の延長を提案していますが、カイロで行われている交渉で、ハマースは無条件での停戦延長には抵抗しており、明示的な停戦延長に同意していません。ハマースの軍事部門は「ガザの封鎖解除(検問所の再開)」「...
イスラエル・ガザの紛争に収束の兆し
- 2014/08/07
- 18:55
ガザでのイスラエルとハマースの紛争が収束に向かっています。8月5日朝から、72時間の期間限定した停戦が発効しており、現在のところ破られておりません。明日8月8日金曜朝で停戦の期限が切れますが、カイロでハマースを含むパレスチナ代表団とイスラエル代表団が、エジプトの諜報機関を媒介者とする間接対話で交渉を行っており、ひとまず1週間程度の延長が議論されているようです。7月8日のイスラエルによる空爆開始から数えると2...
ガザ紛争をめぐる中東国際政治
- 2014/07/26
- 23:59

中東の激動は一層加速していて、個人で全部情報をまとめるのは不可能になっていますが、同時に、各地の動きが相互に連動しているので、多人数で複数の国・地域の動きを別々に調べてホチキスで止めても用をなさない状況です。やはり全体像を俯瞰しようとする絶え間ない個人の思考が必要です。このブログではそれを目指していきます。ガザの紛争については、メディアの注目が集まりますが、基本は、これまでの繰り返しです。パレスチ...
【寄稿】ガザ紛争激化の背景、一方的停戦の怪、来るなと言われたケリー等々
- 2014/07/16
- 17:26
本日の未明に、『フォーサイト』にイラン核開発交渉と、ガザ紛争の背景と構図についての論稿が掲載されました。池内恵「イラン核開発交渉は延長の見通し、ガザ紛争は置き去りに」『フォーサイト』2014年7月16日ほとんど時差のないリアルタイムの情報に基づく考察です。歴史系・思想理論系の論文で机に向かい続けていると、つい息抜きに現状分析の情報整理をしたくなるものですから、寄稿の頻度が上がっています。実際に中東現地の...
【寄稿】ウィーンで会議は踊ってるのか
- 2014/07/15
- 14:23

夜中に短時間でイラン核開発問題をめぐるウィーンでの交渉についてまとめておきました。池内恵「期限切れ目前のイラン核開発交渉─ロスタイムに劇的に決まるか、延長戦か」『フォーサイト』2014年7月15日P5+1(国連安保理事国とドイツ)がイランと行っている核開発問題についての交渉で、7月20日が交渉終結期限とされている。7月2日から13日にかけての多国間での交渉が終わり、焦点は米・イラン二国間交渉に移っている。14日に...
【寄稿・ウェブで公開】『東洋経済オンライン』にイラク情勢分析が掲載
- 2014/07/08
- 15:50

先週お伝えした、『週刊東洋経済』に寄稿したイラク情勢分析が、東洋経済オンラインに掲載されました。池内恵「ISISがイラク侵攻、中東全体の秩序脅かす──過激派の勢力拡大で秩序の流動化が進みかねない」『週刊東洋経済』2014年7月5日号(6月30日発売)ヤフー!ニュースにも転載されたようです。掲載号が紙で出てから一週間後のウェブ掲載は、頃合いの時期でしょうか。現実的にバックナンバーはほとんど売れないわけですから。...
【寄稿:無料になりました】金曜礼拝に「カリフ」現る─『ハフィントン・ポスト』『ブロゴス』にも転載
- 2014/07/07
- 23:53
昨日紹介した、イラク情勢についての『フォーサイト』への寄稿が、無料公開に切り替わりました。『フォーサイト』の宣伝の一環で、ハフィントン・ポストやブロゴスにも転載されました。それらのサイトでもいいですが、フォーサイト本誌でも読んでみてほしいですね。池内恵「イラク・モースルに「カリフ」が姿を現す」『フォーサイト』2014年7月6日このブログのデータベース機能を高めるため、いちおう本文を書きに張り付けておきま...
今年のラマダーン・ドラマ、イチ押しは「実写版・カリフ制イスラーム国家の再興」
- 2014/07/06
- 02:55

休む暇もない。7月4日にイラク・モースルの大モスク(ヌーリー・モスク:Great Mosque of al-Nuri)で行われたとみられる、ISIS改め「イスラーム国家(IS)」の指導者で「カリフ・イブラーヒーム」を名乗るようになったバグダーディーの金曜礼拝への演説(khutuba)の映像が土曜日になって盛んにインターネット上で流れるようになった。新聞各紙も取り上げている。【BBC】【アル=ジャジーラ】【アラビーヤ】【インディ...
記者クラブ講演の概要と映像──「セキュリティ政権」とジハード主義の「開放された空間」
- 2014/06/30
- 23:37
日本記者クラブでの講義シリーズ、先日のエントリではこれまでの回をまとめてみましたが、6月27日の回も概要と映像がアップされましたので再掲します。池内恵「エジプト・シリア・大統領選後の中東」日本記者クラブ、2014年6月27日ここでの主要な概念は(1)「セキュリティ化する各国政権」と、(2)それによっても掃討されず、紛争を繰り広げながら各国の政権と共存するジハード主義勢力の伸張、部分的な「開放された戦線」の成...
日本の中東論のパラダイム転換(人間社会は進歩しない─ただ変わるだけだ)
- 2014/06/30
- 23:01
今日の朝から午後までは、意を決して予約して病院で徹底検査をしてもらった結果、全然問題なし、きれいな内臓お写真を見せてもらって拍子抜けいたしました。調子が悪いと思って節制したり船で海籠りして論文書いてたら治ってしまったのだろうか。というわけで復帰・・・とメールを見たら、なんだかISISの「カリフ制」宣言について一時的にメディアの関心が高まっていたようだ。もう萎んだかも。私が電波の届かない検査室に入っ...
ついに「カリフ制」まで・・・イラクのISISの行き着くところは
- 2014/06/30
- 03:35
『フォーサイト』に速報を書いておきましたが、ISISが「カリフ制」を宣言して、指導者のバグダーディーが「カリフ」を宣言【ユーチューブでの音声による声明】。イスラーム法上のカリフというのは、全世界のムスリムの指導者という意味で、今は現実的にはイラクとシリアの支配領域に限定されていても、それを拠点にどんどん広がっていくということを宣言しています。池内恵「ISISの「カリフ制」国家は短い夢に終わるか」『フォ...
バルザーニー・クルド地域政府大統領が「独立」を明言
- 2014/06/25
- 00:27
『フォーサイト』の「中東の部屋」にまた一本寄稿しました。池内恵「「クルド独立」を口にしたバルザーニー大統領」『フォーサイト』2014年6月24日内容は、CNNのクリスチャン・アマンプールによるインタビューに答えたバルザーニー発言の速報と、背景の歴史解説ですので、英語を読むのが苦にならない方は、CNNの原文を読んでもいいかと思います。"EXCLUSIVE: Iraqi Kurdistan leader Massoud Barzani says 'the time is here...
【海外の新聞を読んでみる】シリア・イラク国境地帯は新たな「アフパック」となるか
- 2014/06/20
- 11:54
米オバマ大統領の当面のイラク政策についての姿勢が示されたが、背後ではISISの伸張を受けて対イラク政策を対シリア政策と一体的にとらえて転換しようという動きが進む、とワシントン・ポストが匿名の消息筋を引いて論じている。White House beginning to consider conflicts in Syria and Iraq as single challenge, The Washington Post, June 19, 2014.The Obama administration has begun to consider the conflicts in Sy...
マーリキー政権との同盟に不信を募らせるオバマ政権
- 2014/06/20
- 11:12
先ほどのエントリで概要を記したが、6月19日の米NSC会合後のオバマ会見で示された対イラク政策の中核的部分のうち、今後の現地イラクでの政治の展開に関わって重要なのは、マーリキー政権への最後通牒あるいは「見放した」とすら聞こえる点だ。イラク側にスンナ派を取り込んだ挙国一致政府の設立を求め、マーリキー政権には根本的に態度・政策を改めるか、本当は辞めてほしいんだがそうは言えない、ということとかなり露骨に表...
オバマのイラク問題への対策が明らかに
- 2014/06/20
- 10:14
オバマが議会指導者との会合を行い、NSC会合を開いた後に、イラク政策をめぐって会見するというので待っていたが、GMT19日16時30分からのはずが遅れて17時30分ぐらいに開始された。要点だけ見て後は仕事に戻った。会見での演説と質疑応答の内容は思った通り。*当面の米の軍事的関与は「300人の軍事顧問団の派遣」にとどめ、イラク政府の特殊部隊の訓練に従事させる。*偵察・インテリジェンスなど情報収集に時間を取る。早...
イラク情勢を見るために~20項目走り書き
- 2014/06/19
- 19:37
カンヅメ状態で本を執筆すること4日目。佳境に入ってきました。イラク情勢についてもアップデートしているので、いくつか報告書を書きました。イラクで何が起こっているのか、現在の動きが何を意味するのか、将来的にどのような影響を及ぼしていくのかについて、だいたい次のようなポイントから見ています。走り書きメモをアップしておきます。1.ISISの伸張は、直接的にはイラク内政においてマーリキー政権の支持層に多いシ...
缶詰2日目~APUでイラクを想う
- 2014/06/17
- 15:02

自主缶詰2日目。まあまあはかどっています。といっても本以外の仕事も積み残しているものを終わらせないといけない。衛星放送やネットは不安定ながらつながっているので、イラク情勢の情報収集と分析もアップデートされています。日本の報道はあまり見ていないのだが、毎回のパターンとして予想できるのは、「米国が中東で軍事行動に出る」という雰囲気になると、その側面でだけ日本のメディアが騒ぐ、ということ。現状のイラク情...
【無料公開中】「イラクとシャームのイスラーム国家(ISIS)」はイラク国家を崩壊させるか
- 2014/06/16
- 12:28
6月13日に『フォーサイト』に寄稿したイラク分析が無料公開に切り替わりました。このエントリの末尾に本文を一応貼り付けておきます。有料に戻ったらたぶん削除するのかな?(6月15日の寄稿は有料のままです)フォーサイト編集部は、イラク情勢やISISを理解するための過去の記事をいくつかピックアップしてくれました。有料のウェブ雑誌に書いたところで、個人的には経済的利益はたいしてないのですが、海外情勢分析が「産業」...
まさに激変する湾岸の安全保障環境
- 2014/05/21
- 02:23
先ほど、「激変する湾岸の安全保障環境」についての最近の論考についてアップしましたが、まさにペルシア湾岸産油国のもっとも重要な国、サウジで気になる動きが相次いでいます。5月20日に発表されたところによれば、サウジのアブドッラー国王がモロッコで静養し、サルマーン皇太子が執務を代行するとのこと。Saudi king on holiday, crown prince in charge: royal court, Reuters, May 20, 2014 11:12am EDTアブドッラー国王は今...
ドーハ1泊4日弾丸出張の仕組み
- 2014/05/14
- 23:59
カタールのドーハに出張に行ってきました。いろいろ面白いものを見ることができました。偶然が重なってカリブ海の小さな国の外務大臣との会食に同席したりしていました(ここは本業や渡航目的と関係ないですが)。今回の日程は「1泊4日」。現地のホテルに泊まるの一泊だけで、行きと帰りが機中泊、という意味です。日本時間の夜に出発して(1日目)、現地の早朝に到着し、その日(2日目)と翌日(3日目)に用事があり、夜ご飯を食...
カタールのエスノクラシー、原資は日本
- 2014/05/10
- 12:21
週明けの弾丸出張で、カタールのドーハに、3月に続いてまた行くのですが、いつものことながら湾岸産油国に行くのは気が重い。エジプトやシリアやレバノンで中東研究の基礎を学んだ私自身の経験が影響しているのかもしれないが、文化的な深みや知的活動の活発さ(質はさまざまだが)があるエジプトやレバント(シリアやレバノン)には、どんなに厄介な条件があっても、いざ行くとなるとわくわくする。しかしペルシア湾岸の産油国は...
サウジとカタール和解か?
- 2014/04/18
- 23:59
世界のエネルギー安全保障に重大な影響を与えるGCC諸国だが、その内紛が激化して心配されていた。 最近の経緯はこんな感じ。3月4日 GCC外相会議⇒カタールとサウジの対立激化。カタールのムスリム同胞団への支援と、アル=ジャジーラの批判的報道にサウジ・バーレーン・UAEが反発3月5日 サウジ・バーレーン・UAEがカタールから大使召還を発表3月25・26日 アラブ連盟首脳会議(クウェート)⇒歩み寄り見られず3月28...
アラブ連盟サミットに向けて
- 2014/03/25
- 06:09
カタールのドーハに来ています。 先日書いたように(「オバマ大統領のサウジ訪問でGCCの内紛は収まるのか」)、オバマ大統領のサウジ訪問の際に行われる予定だった米・GCC首脳会議が中止になり、GCCの内紛の激化が印象づけられましたが、その渦中のカタールです。 といっても、私の出る会議は宗教・政治の関係なので、直接外交問題については議論にならないだろう。若干、一人の参加者に陰で聞けたらいいなと思うこと...
オバマ大統領のサウジ訪問でGCCの内紛は収まるのか
- 2014/03/23
- 13:24
オランダのハーグで行われる第3回核安全保障サミットに注目が集まる。ロシアのプーチン大統領が欠席するので、ウクライナ危機について西側諸国が一致してどのような対応を取れるのかが問われる。 日本にとっては、日米韓の首脳会談が行われるかどうか、そこで韓国の朴大統領がどのような態度に出て、オバマがどう反応するかが、今後の日本の外交の方向性あるいは少なくとも「雰囲気」をかなり強く規定するだろう。 というわけ...
トルコの3・30地方選挙がエルドアン政権の将来を左右する
- 2014/03/19
- 11:53
トルコで3月30日に行われる統一地方選挙(各地の市長選挙)は急速に、デモと汚職追及で荒波に揉まれたエルドアン政権への民意を図る、重要な意味を持つものとなってきました。昨年までは(1)統一地方選挙で勝って、(2)その勢いで8月の大統領選挙に鞍替え立候補して勝利し、(3)2015年の議会選挙で勝利して大統領権限を強める憲法改正を行い、「皇帝」(むしろ「スルターン」か)のように君臨しようかという勢いだったエルド...
リビアの謎のタンカーは米海軍特殊部隊が拿捕
- 2014/03/18
- 00:49
リビア東部の民兵集団が占拠した石油施設から原油を船積みして追っ手を振り切って外洋にでたタンカー「モーニング・グローリー号」が、3月16日深夜に米海軍特殊部隊SEALSが強制的に乗り組んで拿捕した模様です。"U.S. forces seize tanker carrying oil from Libya rebel port," Reuters, March 17."UPDATE 3-U.S. forces seize tanker carrying oil from Libya rebel port," Reuters, March 17. この件について、『フォーサイ...
リビア政府は領域一円支配を取り戻せるか
- 2014/03/14
- 00:31
タンカーの行方よりももっと重要なのは、これをきっかけに流動化したリビア内政がどこへ向かうか、ということ。 リビアの暫定政権を構成する国民全体会議(議会)は、この問題でザイダーン首相を不信任決議して解任。ザイダーン首相には汚職の嫌疑もかけられ、逮捕される前にマルタを経由して西欧に逃亡した模様。 まあこれだけを見るとよくある「混迷深まる中東情勢」という決まり文句で収まりそうだけど、もう少し考えてみよ...