リビアの石油のゆくえ
- 2014/03/13
- 23:59
リビアの民兵集団が占拠した石油生産施設から船積みした謎の「北朝鮮船籍」タンカーが外洋に出たという話を書いたが(無料で読めます⇒池内恵「リビア東部の「自治」勢力から石油を船積みした「北朝鮮船籍」タンカーの行方は」『フォーサイト』2014年3月12日)、その続き。 まず、タンカーはどこに行ったか。上の記事では「炎上」説を紹介しておいたが、その後の報道では、タンカーがエジプト領海に入った後に、リビア海軍は見失...
お知らせ 無料公開 リビアの北朝鮮船籍タンカーの行方
- 2014/03/12
- 12:09
お知らせ。当面無料公開になりました。池内恵「リビア東部の「自治」勢力から石油を船積みした「北朝鮮船籍」タンカーの行方は」『フォーサイト』2014年3月12日...
リビア反政府派から北朝鮮のタンカーが石油を買った?
- 2014/03/12
- 09:41
昨夜・今朝方、夜更かしして書いてしまいました。書き終わった後に東京地方はぐらっと揺れました。池内恵「リビア東部の「自治」勢力から石油を船積みした「北朝鮮船籍」タンカーの行方は」『フォーサイト』2014年3月12日リビアというと「混乱」という印象があるのでしょうが、それに「北朝鮮」が絡んで、しかも「タンカー炎上」などとも報じられているので、日本でも関心があるかと思いまして・・・しかし人目を引くはずの「タン...
在米エジプト人研究者の苦衷
- 2014/02/27
- 01:38
前のエントリの続き。閉ざされたエジプト社会の脱線ぶりと、在外エジプト人には鮮烈なギャップがある。エジプト人の優秀な人はこぞって海外に出るので、特にアメリカで、科学研究の場で出世している人が多い。例えばこの人。興奮したエジプト・メディアの突撃取材を受けて、かなり困っているご様子。「科学研究とは何か」を若い記者に懇々と説いているが、あまり通じていないようだ。最初の方を若干かいつまんで訳すと・・・質問「...
エイズとC型肝炎にも勝利したエジプト軍
- 2014/02/26
- 23:41

インターネットの時代になって、怖いのは、どこの国でも、夜郎自大に自国民を威圧してこられたエラいさんの、実態としてはトホホな水準の発言や、それをもてはやす一部の人の行状が、一瞬にして世界中に晒されてしまい、デジタル的に永遠に保存されて複製され、取り返しがつかないこと。日本でも最近続発していますが、こういった方面で人後に落ちない(?)のはエジプト。2月22日に、エジプト軍の軍医のかなり偉い人(少将:軍医...
MERS(中東呼吸器症候群)はラクダでうつるらしい
- 2014/02/25
- 21:45
100枚(4万字)を超えた論文の詰めで朦朧としていますので、ニュース紹介は手短に。2月20日 リビアで憲法起草委員会の直接選挙の投票が全国で行われる。2月22日 シリア内戦ではじめて国連安保理決議が可決(安保理決議2139号)。これはシリア内戦にどう影響を与えるのか。かえって激化するという説も強い。2月24日 エジプトのベブラーウィー内閣が突如総辞職。これが何を意味するのか。また、より重要かもしれないのは、イエメ...
エジプトのおバカ・ニュース(とロシアへの接近)
- 2014/02/20
- 02:36

今のエジプトの世相を示す、オバカ・ニュース。エジプトの民間の新聞ワタン(el-Watan)が2月19日にウェブに載せた「商人がスィースィーのロシア訪問に寄せて、ナイル河の上に、オバマはゲーム・オーバーだと書いた」という記事。マンスーラという、上エジプト(エジプト北部・ナイル河下流のデルタ地帯)の主要都市で、アニース・サイード・アズィーズィーとかいう鉄商人がスィースィーのロシア訪問を祝ってナイル河に錫と発泡スチ...
タバの観光バス爆破:続報
- 2014/02/17
- 11:48
昨日のエジプト・タバでの観光バス爆破、(1)「アンサール・バイトル・マクディス(エルサレムの支援者たち)」が犯行声明を出した。観光客に退去を勧告。(2)内務省が、死者数を、当初の4人から3人(韓国人観光客2名とエジプト人ガイド1名)に修正。とのこと。ネットで見る限り産経新聞はこのニュースをそれなりにおさえていますね。エジプトの英語紙では、シナイ半島での大規模な観光客を狙ったテロとしては2006年のダハブで...
エジプト・シナイ半島タバで観光バス爆破
- 2014/02/17
- 03:09
2月16日、エジプトの東部シナイ半島のタバで観光バスが爆破され、少なくとも4人が死亡。爆破の映像(34秒ぐらいから)。エジプトはシナイ半島を中心に、これまでとは違って、イラクやシリアと(程度の差はあるが)同様の、武装反乱(insurgency)が続く、ある種の内戦状態になっている、という話はしてきたが、今回また一歩進んだ。これまでの経緯はとりあえずこのあたりから。「エジプト軍ヘリ撃墜で「地対空ミサイル使用」の恐怖...
Al Monitorで読む中東
- 2014/01/30
- 23:59
中東情勢について、ニュースとその「読み方」を知るのに便利なのが、『Al-Monitor』。タイムリーに中東の新聞の論説の翻訳や、代表的な知識人や専門家のオリジナル原稿が載る。現地のメディアと欧米メディアとの中間ぐらいの線を行っている。例えばエジプトの最新情勢と、チュニジアとの比較論。このブログの過去のエントリ【これとかこれ】を読んでいた人にとっては、そんなに目新しくはないかもしれないが、これ以外にもイランや...
超大国の店じまい? オバマ大統領の一般教書演説2014
- 2014/01/29
- 19:11
今年のオバマ大統領の一般教書演説(1月28日)、録画しておいて見ました。全文ももう出ている。一般教書演説は、アメリカらしく空元気かと疑うほどに大統領の口調も会場の反応もハイなことが多いのだが、今回はこれまでになく淋しい心象風景が伝わってきた。黄昏の超大国。予想通り、ひたすら内政問題に終始した。外交は最後の方にちょっとだけおざなりに。アジア・太平洋地域については特に少なく、具体的なことは何もなし。アジ...
エジプトは「ちょっといい加減なファシズム」に邁進中
- 2014/01/28
- 01:14
チュニジアで憲法が成立して湧き立っているのに対して、同日同刻、エジプトは軍人大統領推戴に向けてまっしぐら。予想されていた通り、1月26日のマンスール暫定大統領のテレビ演説では、移行期の工程表を変更して、議会選挙ではなく大統領選挙を先に実施すると発表。これで、軍人出身者が出馬し、対抗馬を実質上許さずに、少しでも反対を唱える人たちはデモ禁止法や法廷侮辱罪で投獄して当選し、大統領は議会の制約なく独裁権限...
答え合わせ(1)チュニジア立憲プロセス成功の理由
- 2014/01/27
- 22:50
中東・イスラーム学のブログを始めてみて10日ぐらいしかたっていないけど、ほかの同様のブログでは何を言っているのかが気になってきた。まずチェックしたいのは、ファン・コール先生(ミシガン大学教授)のブログ「Informed Comment」。英語圏の中東情勢ブログの最高峰。誰も追随できない。エントリ数がすごく多い。重要なニュースへのリンクが早い。コール先生のお友達の優秀な学者のコメンタリーや論文なども即座にリンクされ...
チュニジアで新憲法制定 組閣も
- 2014/01/27
- 22:12
1月26日深夜、チュニジアの立憲議会が新憲法案を可決。信任投票の必要はなく、そのまま制定へ。149か条からなる新憲法。ジュムア新首相も組閣名簿をマルズーキー大統領に提出。こちらは議会で承認されるかどうかまだ分からない。内務大臣の再任をめぐって、世俗派がイスラーム主義派を突き上げるという構図。チュニジアの立憲プロセスの重要性については集中的に書いてきたので、改めて列挙します。「チュニジアではなぜうま...
エジプト軍ヘリ撃墜で「地対空ミサイル使用」の恐怖
- 2014/01/27
- 19:43
エジプトがまた一歩、局地的・低強度ながら「内戦」に近づいている。その画期と言えるのが、1月25日のシナイ半島北部シャイフ・ズワイドでの軍ヘリコプター撃墜だ。当初はエジプト政府当局は機器の故障が原因としていたが、実際には撃墜されたことが明らかになった。1月24日のカイロ警察本部はじめとした4ヵ所の爆破テロで犯行声明を出したアンサール・バイト・マクディス(聖地エルサレムの守護者)が、軍ヘリ撃墜について...
チュニジアではなぜうまくいって、エジプトではなぜうまくいかないのか
- 2014/01/26
- 22:06
それにしても日本ではなぜチュニジアの動きが報じられないのだろう。エジプトで2011年1月25日に始まった大規模デモを起点にして、現在の情勢が「アラブの春から3年」という切り口で報じられることが多いので、1月26日の日曜日の各局のニュース番組を見てみた。すると、チュニジアで今まさに起っている、欧米メディアでは伝えられている重要な動きが、まったく取り上げられていなかった。ここは日本のメディア関係者の限界。物事を...
エジプト情勢の今後の見通し
- 2014/01/25
- 23:19
1月24日のテロは、今後のエジプトの政治の展開にどう影響を及ぼすだろうか。(1)軍・警察が「対テロ戦争」を標榜し、軍主導の政権へのいっそうの翼賛を国民に呼びかける。(2)スィースィー国防相が軍籍を離脱し「文民」と称して大統領選挙に立候補。反対勢力を排除し、圧倒的な得票率で当選(ただし投票率は低い。賛成票と棄権のみ、という状況で、選挙による体制正当化の効果が薄れる)(3)カイロなど都市部を中心に中間層...
テロとムスリム同胞団の関係
- 2014/01/25
- 20:30

カイロの警察本部への爆破テロについて、多くの報道が出ている【爆発の瞬間】【エジプトに関して質が高い英語メディアはこれ】。軍・警察への翼賛体制となっているエジプトでは、今回のテロも「ムスリム同胞団の仕業だ」という議論が活発に行われるだろうが、これは疑わしい。少なくともエジプトが今抱えている政治問題を正確に反映していない。まず、ムスリム同胞団は、幹部が中枢から末端組織までほぼくまなく逮捕され投獄されて...
エジプト・カイロ警察本部への大規模なテロ(1月24日)
- 2014/01/25
- 19:14
エジプトでは昨日1月24日、複数の大規模な爆弾テロがあった。最も重要なのは、カイロ警察本部の爆破。写真を見る限り、これはもう局地的な「内戦」「軍事攻撃」に近い規模になっているのではないかと思われる。タハリール広場に近い内務省のビルは、近くの通りをブロックで封鎖して近づけないようにしてあるので、犯人側は、警察本部を標的にしたようだ。エジプトの治安の総本山が、道路に面した部分だけとはいえ、大破するような...
チュニジアとエジプトの論戦@ダボス会議
- 2014/01/25
- 17:20
チュニジアはエジプトを「反面教師にしている」という話。チュニジアのイスラーム主義系与党ナハダ党の最高指導者ラーシド・ガンヌーシー氏がダボス会議のパネルでエジプトの元外相・元アラブ連盟事務総長で、クーデタ後の新憲法制定のための「50人委員会」の議長となって、旧体制派の先鋒のようになっているアムル・ムーサ氏を批判。ダボス会議の会議の英語のホームページではとっさに検索しても出てこないので(アラビア語とフラ...
チュニジアではなぜ移行期プロセスがうまくいっているのか
- 2014/01/25
- 16:30
日本では誰も注目していないようだけど、1月23日に、「元祖アラブの春」のチュニジアでは立憲議会が憲法草案を確定した。あとは全文について改めて立憲議会で採決するのみ。早ければ26日にも行われるのではないか。Constitution Passes Milestone, Final Vote Expected in Days, Tunisia-Live, 23 January長い困難な道のりでしたが、よくここまできました。エジプトで去年6月30日の反ムスリム同胞団デモと、7月3日のクーデタで、選...
シリア問題をめぐるジュネーブⅡ会議でテロリズムが論点に
- 2014/01/23
- 21:26
1月22日から、スイスのモントルーで、シリア問題をめぐる「ジュネーブⅡ会議」が開かれている。これについては『フォーサイト』に分析を寄稿したのだけど、その一部を下記に。アサド政権は何年かかったとしても軍事的に勝利しようとしているため、ジュネーブⅡでまともに話し合う気はない。もっぱら「反体制勢力はアル=カーイダ系のテロリストだ」というプロパガンダで、欧米の介入を阻止しようと考えているようだ。実際これは効果...
トルコはもう「三丁目の夕日」じゃないよ
- 2014/01/22
- 17:17
都市部の世俗派を中心にした反政府デモに続いて、今度は政権内の汚職と、汚職追及の背後にいるイスラーム系団体との仲間割れで揺れるトルコ、エルドアン政権について、英『エコノミスト』誌は示唆に富む論説を載せてくれている。最近のものではこのあたりか。Turkish politics: No longer a shining exampleTurkey’s government disappoints because of allegations of sleaze and its increasingly authoritarian ruleThe Economi...
シリアの「中道」勢力はどこに?
- 2014/01/20
- 14:52

ちょっとおもしろいな、と思った記事。「アサド政権元官僚が、置き去りにされた一般シリア人を代弁すると主張(Ex-Official Claims to Speak for Sidelined Syrians)」『ニューヨーク・タイムズ』1月18日(電子版)に出ていました。たしか無料で月何本か読めるのではないかな。より細かなインタビュー記事はここ。ジハード・マクディスィーというのは、シリア問題を追いかけている人にとっては馴染みの名前と顔。元シリア外務省報...