自由主義者の「イスラーム国」論・再び~異なる規範を持った他者を理解するとはどういうことか
- 2014/10/23
- 23:59
今日の『朝日新聞』に、「イスラーム国」についての識者の発言が載っていました。特に、「イスラーム国」に関して、当事者でもある、中田考さんの発言が注目されます。まず、私は、世界にはこのような多様な考え方があるということを知ることは大切だと思います。そもそも新聞とは、その厳しい制約条件から、中立的でも、客観的でも、卓越的でもあり得ないものである以上、様々な意見が、さほど正確なフィルターなしに載ってしまっ...
トルコと米国の当面の妥協──イラクのクルド武装組織をシリアに投入
- 2014/10/23
- 19:07
シリアでの「イスラーム国」への対処について、決定的な鍵となるトルコの姿勢が具体化しつつある。米国のトルコへの強い参戦圧力と、独自の解決策や懸念を擁してそれに抗してきたトルコとの外交的なせめぎ合いに変化がみられた。注目されるのはこの二つの動き。10月19日:米軍がシリア北部コバー二ー(アラブ名アイン・アラブ)のクルド武装勢力YPGに殺傷力を持つ武器を投下。10月20日:トルコがイラクのクルド武装勢力(ペシュ...
【地図と解説】「イスラーム国」への参加者の出身国~ご一緒した常岡さんのこと
- 2014/10/21
- 23:59

今日は長い論文をぎりぎりで出したり授業を本格立ち上げしたり編集者が来たり研究会があったりで丸一日全く息抜きなし。ということで、以前のテレビ出演の発言記録をリンクして、ちょっと地図で補足するぐらいにしておこう。2014年9月20日(土)の「NHK週刊ニュース深読み」の文字おこしがアップされていました。NHK側が持ってきた「イスラーム国」の解説は、正直私にもよく理解できない代物なので、コメントしません。いろ...
【寄稿】本日の読売新聞朝刊文化欄で「イスラーム国」をめぐる日本のゲンロン状況を風刺
- 2014/10/20
- 10:29
今日の読売新聞朝刊にコラムを寄稿しました。「イスラーム国」問題。文化欄ですから、日本の文化状況への批評ですよ。中東分析ではありません。念のため。池内恵「「イスラム国」論 希薄な現実感」『読売新聞』2014年10月20日朝刊たぶんウェブ上には今後一生出てきませんので、キヨスク・コンビニ等でお買い上げください。新聞の文化欄のコラムは、ここ数年、打診を受けても「乗り気がしないなあ」と書いていなかったのですが、今...
日本人戦闘員の系譜~戦後社会に寄る辺なき人たち
- 2014/10/17
- 12:54
面白い記事が出ていた。黒井文太郎「戦いたい!海外の戦場へ向かう日本人たちの系譜 元自衛官からイスラム国を目指した北大生まで」JBプレス、2014年10月17日日本の戦後の裏面史でもあり、中東情勢の番外編とも言える。紛争の大勢に影響を与えることはついぞなかったが、思想・文化現象として興味深い。私自身は、さらにマイナーな、戦場には出ないが「後方支援」した日本人たちのことが時折気になる。フィールドワーク(というか...
陰謀論に花束を
- 2014/10/16
- 22:53

今日の、BSスカパー「Newsザップ」出演では、12時から午後3時までずっとスタジオに座りっぱなしだったので、極度に疲労しました。こんなことはしょっちゅうやってられませんね。おまけに、今日に限って、米国ダラスの病院内でのエボラ出血熱の二次感染の事例が生じて米国が浮き足立っているので、CNNは特別編成でアマンプールの番組が取り止め。BBCもトップニュースでこの話題に。毎時0分や30分の定時ニュースで、シリアやイ...
【テレビ出演】16日12時~15時、スカパーの「Newsザップ」(無料放送)でトーク
- 2014/10/15
- 17:18

テレビ出演です。明日16日の正午から3時間にわたって、スカパーのZAP(でいいのかな)という無料チャンネル(だと思う)で最近始まった、BBCやCNNを見ながら解説、トークをするという番組に出ます。News ザップこんなチャンネルと番組があるんですね。BSのリモコンで241chを押せば見られるそうです。実はまだ見たことありません。明日まで見る時間はないので、ぶっつけ本番で臨みます(今日は日帰り京都出張。なん...
【学生向け事務連絡】14日授業通常通り
- 2014/10/14
- 09:32
下記の掲示がありましたので、本日午後の「中東地域文化研究」(演習形式)は通常通りに初回開講します。【重要】台風19号接近に伴う休講措置等について(第2報) / 【Important】2nd Notice on Class Cancellation due to the Approach of Typhoon No. 19池内恵(2014年10月14日午前9時30分)...
【学生向け事務連絡(2):イスラーム政治思想史概説】6日に台風で欠席の受講希望者へ
- 2014/10/11
- 18:20
【学生向け事務連絡】文学部「イスラーム政治思想史概説」に参加希望のみなさん10月6日(月)は、午前中は台風の影響で一斉休講でしたが、午後は自主判断だったため、また天候が持ち直したため、初回の授業を予定通り行いました。事務当局からの休講の決定や連絡が直前だったことや、午前中は非常に天候が悪かったことを勘案して、初回欠席の学生も二回目からの出席を認めます。次回までのテキストは配布していますので、入手して...
【学生向け事務連絡:14日台風の場合】教養学部後期課程「中東地域文化研究」の初回開講
- 2014/10/11
- 18:10
【東大・学部生向け事務連絡】冬学期の教養学部後期課程「中東地域文化研究」に参加希望のみなさんへ。第1回の授業は14日(火)です(先週7日は秋季入学式のため授業休止日でした)。教室・時間割等は便覧あるいはオンラインで確認してください。14日は台風の影響を受ける可能性があります。学部の事務局から一律に休講措置等が取られる場合は、14日(火)午前6時30分に教養学部のホームページに掲載されるとのことです。まずこ...
自由主義者の「イスラーム国」論~あるいは中田考「先輩」について
- 2014/10/09
- 23:59

10月7日のニュースウォッチ9で使われたコメントはほんの1行だけでしたが、この日報じられた二つの事案に関連したコメントとしてはこれだけで十分でしょう。このキャプチャ画面(おでこが保守系政治家並みにテカってるのはブラインドの隙間から西日が当たっているから。カメラマンがすごく気にしていましたが、時間がないので続行しました)はコメントの後段部分ですが、この前に、日本には、イスラーム国、あるいはイスラーム教一...
【テレビ出演】ニュースウォッチ9で録画コメント放映(おそらく)
- 2014/10/07
- 20:59

ノーベル物理学賞を日本人3人が受賞したというニュースで、ニュース7の録画コメントは飛んでしまいましたが、ニュースウォッチ9では使用されるという連絡が。まだ油断できません(笑)。明らかに、ノーベル賞の方が重要なニュースとは思います。しかし社会のフリンジで過激化する人たちのメカニズム(そこには研究者やメディアもかかわっている)は、今後より深刻な形で出てくるでしょう。そのための先触れとして、今回のかなり...
【テレビ出演】本日NHKニュース7で日本人の過激派への参加の可能性について
- 2014/10/07
- 16:55

本日午後7時からのNHKニュース7でコメントが放映される模様。ニュースウォッチ9でももしかしたら使用されるかもしれませんが、まだ決まっていません。テーマは「イスラーム国」への日本人戦闘員の参加の問題。なお、コメントの収録は9月29日で、今回の事件発覚よりかなり以前に行われたものです。もともとは、「日本人の戦闘員がいるのか、いたらどうなるのか」という「警鐘」を鳴らす類の、ニュース番組内での小特集の一環と...
【コメント】毎日新聞に「イスラーム国」参加未遂の日本人問題について
- 2014/10/07
- 16:34
今朝の毎日新聞にコメントが掲載されています。夜遅くの校了寸前に連絡があって、偶然、この問題についてニュースを読んで考えていたので、答えてしまいました。本当はすぐに出さねばならない原稿・書籍が複数積もっていて編集者が待っているのですが・・・毎日新聞はイスラム国関連で頑張って取り組んでいると思うので、非常識な時間でしたが受けてしまいました。また、「自由な社会からの逃走」が先進国で一定数生じるという普遍...
日本人の「イスラーム国」参加未遂の報道に思う
- 2014/10/06
- 23:59
「イスラーム国」の戦闘に参加を目指した日本人が摘発されたとのこと。事実関係はほとんど伝わってきていません。どのような思想的背景があるのか、あるいはむしろ非常に軽率に参加しようとしたのか、事実関係が分からない限り、この事件そのものについては議論しようがありません。しかし、日本の社会の固有の文化的・宗教的・政治的な通念と、イスラーム教の政治・軍事理念とが触れると、社会の周縁部で非常に特異なタイプの過激...
トルコのシリア北部に対する政策は1991年のイラク北部に対するものとそっくり
- 2014/10/05
- 23:30
トルコ国会は10月2日(木)にシリアとイラクへ軍の越境攻撃を認める決議を採択した。これによってエルドアン大統領・ダウトウル首相の現政権はシリア・イラク情勢に軍事的に対処するためのフリーハンドを得たことになる。米主導のイラクとシリアでの「対イスラーム国」への空爆にトルコが参加を渋ってきたことはすでに書いた。空爆に参加しないだけでなく、NATOに提供してきたインジルリク空軍基地の使用をこの件に関しては拒...
「イスラーム国」の黒旗の由来
- 2014/10/04
- 23:59

イスラーム世界の価値規範と、われわれの世界の価値観で、食い違うところは随所にあります。もちろん、イスラーム世界一般とは必ずしも常にくくることができず、穏健な一般市民と、過激派の間で同じものを見てもまったく異なる印象を持つ場合はありますが、今回はイスラーム世界一般に、価値規範上、正統とされ高い価値を置かれているシンボルが、事情を知らない日本の一般市民には単に否定的な、邪悪な印象を与えてしまう事例を取...
【断然】ちくま新書の一冊を選ぶなら『もてない男』だ~忙中閑あり~
- 2014/10/03
- 14:42
一本原稿が終わったので、次の仕事に出かける前の一瞬の間にエントリを一本載せるか。「ちくま新書の創刊20周年記念「私が選ぶ一冊」 ちくま新書ブックガイド」に短文を寄せました。(この頃に書いていた)無料のパンフレットです。大きな書店に行くと置いてあるかもしれない。9月に出ているからもうなくなっている可能性もあるが、しかしいろいろイベントとかやっているからまだあるだろ。編集部のアンケートに答えて、いろんな...
『週刊エコノミスト』の読書日記は、いったい何のために書いているのか、について
- 2014/10/01
- 23:59

『週刊エコノミスト』に連載の読書日記、第5回が発売になりました。池内恵「帰省して「封建遺制」を超えた祖父の書棚へ」『週刊エコノミスト』10月7日号(9月29日発売)、67頁今回はちょっと私的なことを書いてみました。紀行文風ですが、実際には今後ゆっくり書いていきたいことの種を方々に仕込んであります。かつての日本の学問と「養子」という制度の関係とか、明示的ではないのだけれども、私的なところを出発点に、地下茎の...